数学徘徊記

自由な数学ブログ。

#だま氏の謎

来年の年賀状は何か変わったことをしたいなと思い、この企画をしました。
2017年賀状特設ページ!

#だま氏の謎 です。

これは、だま氏が5つの謎を提示し、みんなに集団知で解いてもらうという企画です。

どれだけ早く解かれてしまうか楽しみです。

ルール

  • 相談は自由です。集合知の力を見せてください。
  • その際、このサイトについてつぶやくとき、ハッシュタグ「#だま氏の謎」を必ず入れてください。

問題の発表は、1月1日の午前8時です。

半年ぐらい前に考えた問題がやっと解けた。

半年ぐらい前に考えた問題ですが、やっと解けました。
su-hai.hatenablog.com
これです。

解答
任意の奇数について、その倍数で各桁がすべて奇数となるようなものが存在することを示す。

任意の奇数を{a\cdot 5^b}(ただし{a}は5の倍数でない奇数)とおく。

まず、次の補題を示す。
任意の{n}について、すべての桁が奇数となる{k}桁の{5^n}の倍数が存在する。

数学的帰納法で証明する。
{n=1}のとき自明。(5が条件を満たす)
次に、{n=k}のときに命題が成り立つと仮定し、{n=k+1}のときも命題が成り立つことを証明する。
{5^k}の倍数で、各桁が奇数であるものを{m}とおく。
このとき、{1\cdot 10^k+m,3\cdot 10^k+m,5\cdot 10^k+m,7\cdot 10^k+m,9\cdot 10^k+m}はすべて各桁が奇数となる{k+1}桁の数だが、このうち1つは{5^{k+1}}の倍数であることを示す。
{1\cdot 10^k+m,3\cdot 10^k+m,5\cdot 10^k+m,7\cdot 10^k+m,9\cdot 10^k+m}をそれぞれ{5^k}で割ると、{1\cdot 2^k+\frac{m}{5^k},3\cdot 2^k+\frac{m}{5^k},5\cdot 2^k+\frac{m}{5^k},7\cdot 2^k+\frac{m}{5^k},9\cdot 2^k+\frac{m}{5^k}}となるが、{2^k}は5の倍数でないため、これらはそれぞれ5を法として互いに異なる。
よって、{1\cdot 2^k+\frac{m}{5^k},3\cdot 2^k+\frac{m}{5^k},5\cdot 2^k+\frac{m}{5^k},7\cdot 2^k+\frac{m}{5^k},9\cdot 2^k+\frac{m}{5^k}}のなかに5の倍数が存在するため、{1\cdot 10^k+m,3\cdot 10^k+m,5\cdot 10^k+m,7\cdot 10^k+m,9\cdot 10^k+m}のうち1つは{5^{k+1}}の倍数であることが証明された。

そして、すべての桁が奇数となる{a\cdot 5^b}の倍数が存在することを示す。
まず、{5^b}の倍数ですべての桁が奇数となる{b}桁の奇数を{x}とおく。
また、鳩ノ巣原理により、{\{0,1,10^b+1,10^{2b}+10^b+1,\cdots ,10^{(a-1)b}+10^{(a-2)b}+\cdots +1\}}のなかには{a}で割った余りが等しいものが存在し、それぞれの差を{10^{kb}+10^{(k-1)b}+\cdots +10^{lb}}とおけば、これを{10^{lb}}で割ったものは{a}の倍数である({a}は5の倍数でない奇数のため)。それを{y}とおく。
このとき、{xy}は各桁がすべて奇数である。よって証明された。

2017JJMO本選模試を解いてみよう(後半)


では、問4と問5の解答です。

問4

これは、点{X}を置けるかどうかがカギになります。
所見でとれたらスゴいです。

解答

f:id:yootaamath:20161204151909p:plain
対称性より、点{P,A,B}{Q,A,D}はこの順に並ぶと仮定してよい。
{\triangle ABQ}の外接円と直線{PQ}が交わる点を{X}とする。
このとき、{\angle PDA=\angle ABC=\angle AXQ}より、
4点P,D,A,Xは同一円周上にある。
よって、方べきの定理を使って
{
\begin{eqnarray}
PD\cdot PC+QB\cdot QC&=&PA\cdot PB+QA\cdot QD \\
&=& PQ\cdot PX+PQ\cdot QX\\
&=& PQ(PX+XQ)\\
&=& PQ^2
\end{eqnarray}
}
よって示された。

問5

これは、数学セミナーの2015年11月号の「エレガントな解答をもとむ」から出題。
問5らしい問題ではないでしょうか。

解答

「2点間のとりえる距離が2種類になる」という条件を{P}とする。
正五角形の頂点は{P}を満たすので、{n\geq6}のとき{P}を満たす配置は存在しないことを示す。
まず次の補題を示す。
補題. もし{P}を満たす6点からなる配置が存在したとすれば、そのなかに正三角形が含まれる。
証明. 配置の中のある点{X}に注目する。この頂点とほかの5点とのそれぞれの距離は2種類なので、5つの点のなかに、同じ長さの距離をとる3点が存在する。これを{A,B,C}とし、{XA=XB=XC=a}とおく。もし{AB,BC,CA}の中に長さが{a}となるものが存在したとすれば、一辺が{a}の正三角形が含まれる。またそうでないときは、{AB=BC=CA}となるので、{ABC}が正三角形となる。よって示された。

つぎに、正三角形が存在することが分かったので、正三角形に点を追加する方針で考える。
正三角形に点を追加して{P}を満たすようにするとき、新しく点を追加できる位置は下の図のような場所しかない。
f:id:yootaamath:20161204153534p:plain
6点以上追加する場合、正三角形に3点以上追加する必要がある。{P}を満たすためには新しくできる長さを同じにする必要があるため、考えられる配置は次の3つに限られる。
f:id:yootaamath:20161204153549p:plain
しかし、これらはすべて{P}を満たさない。よって6点以上からなる配置は存在しない。

補足

証明で使われた補題は、ラムゼーの定理と呼ばれています。
mathtrain.jp

2017JJMO本選模試を解いてみよう(前半)

というわけで解説します。今日は問1から問3まで。

今思えば少し簡単すぎた…。

問1

2016年の問1は、問1のくせに簡単ではなかったので、その傾向を反映させてみました。

解答

f:id:yootaamath:20161201202931p:plain

図のように、三角形{ADE}{BMC}が合同になるように点{E}をとる。四角形{DCEM}は平行四辺形なので、{\angle DAE=\angle CBM=\angle CDM=\angle DCE}である。従って、4点{A,D,E,C}は同一円周上にある。円周角の定理により{\angle ACD=\angle AED=\angle BCM}である。

問2

そろそろN(整数論)が出るかと思ったので、出してみました。
(といってもC(組合せ)やA(代数)の要素も強い)

解答

等式\(ab+a+b=(a+1)(b+1)-1\)より、この黒板Xに書くことのできる数に1を加えた数の全体は、別の黒板Yに次の規則のもとで書くことのできる数の全体に一致する。
 始めに2,3が書かれている。
 黒板にすでに書かれている二つの数の積を書き加えることができる。
このとき、黒板Yに書くことのできる整数は、\(2^n\cdot 3^m\)の形の数であり、\(13121+1=2\cdot 3^8\),\(12131+1=2^2 \cdot 3^2 \cdot 337\)だから、13122を黒板Yに書くことはできるが、12132を書くことはできない。よって、13121を黒板Xに書くことはできるが、12131を書くことはできない。

問3

ちょっとこれは簡単すぎちゃうか?

\[\frac{1}{2}(a+b)^2+\frac{1}{4}(a+b)\geq a\sqrt{b}+b\sqrt{a}\]

まず左辺は\(\frac{1}{2}(a+b)\)でくくれます。

しかも右辺は\(\sqrt{ab}\)でくくれます。

これは相加相乗平均の不等式しかない!

証明

相加相乗平均の不等式より、
\[\frac{1}{2}(a+b)\geq \sqrt{ab} \hspace{3.5em} \cdots①\]
また、
\[\left( \sqrt{a}-\frac{1}{2}\right) ^2+\left( \sqrt{b}-\frac{1}{2}\right)^2 \geq 0\]
より
\[a+b+\frac{1}{2} \geq \sqrt{a}+\sqrt{b}\hspace{3.5em} \cdots②\]
よって、①と②を辺々掛け合わせて結果を得る。

 

問4と問5はもう少し時間がかかるかな?というところです。

特に問5は時間がかかりそう。

問題コーナー(第2回)解答

では解答発表です。
三角形\(ABC\)の外心を\(O\)とし、辺\(BC,CA,AB\)の中点をそれぞれ\(M_A,M_B,M_C\)とする。
このとき三角形\(AOM_A,BOM_B,COM_C\)の外接円は点\(O\)以外の1点で交わることを示せ。
mon2q
円に関する反転を用いた解法です。
mon2

点\(M_A,M_B,M_C\)をそれぞれ三角形\(ABC\)の外接円で反転させます。
このとき、点\(M_A,M_B,M_C\)はそれぞれ図の点\(A',B',C'\)に移ります。
(点\(A',B',C'\)は、直線\(B'C',C'A',A'B'\)がそれぞれ点\(A,B,C\)で三角形\(ABC\)の外接円に接するような点)

なぜなら、たとえば\(M_A\)に注目するとき、
\(\angle OM_AB=\angle OAB\)より\(\triangle OM_AB\simeq \triangle OAB\)だから
\(OM_A\cdot OA'=OB^2\)となるからです。 \(M_A,M_B\)についても同様です。

よって、三角形\(AOM_A,BOM_B,COM_C\)の外接円は、反転によって
それぞれ直線\(AA',BB'CC'\)に移ります。

そして、
\[\frac{A'B}{BB'} \cdot \frac{B'A}{AC'} \cdot \frac{C'C}{CA'} = 1\]
であるので、チェバの定理の逆により、この3つの直線は1点で交わります。 

よって、反転する前の元の図形、三角形\(AOM_A,BOM_B,COM_C\)の外接円は1点で交わります。 

マスターデーモンに挑戦

数学界で「マスターデーモン」というともうあれしかない、恐ろしい奴です。

1990 IMO 問3
\(\cfrac{2^n+1}{n^2}\)が整数となるような1より大きい整数\(n\)をすべて求めよ。

見た目はシンプルで、中学生も簡単に理解できる問題なのに、
世界中の高校生を悩ませた、デーモン的な存在。 

これの攻略をしていきます。 

思考過程

まずは、\(n\)に\(2,3,4,5,\cdots\)と代入していきます。
そうすると、\(n\)が偶数だとダメだということが見えてきます。(分子が奇数、分母が偶数となるため)

 

\(n=15\)くらいまで計算しても、\(n=3\)のときしか整数とならないので、
これが答えかな…?という見当をつけておきます。

 

しかし分母が\(n^2\)というのは考えにくいなあ。。。

 

ここで

su-hai.hatenablog.com

を使うことを考えると、
\(n\)が3の倍数であることを示せばいいのではという見当がつきます。

 

なぜなら、\(n\)は奇数だということが分かっているので、
\(2^n+1=2^n+(-1)^n\)であり、LTE補題を適用するには
\(2-(-1)=3\)の倍数であることが必要だからです。

 

ここから、こういう発想を思いつくことが難しいのですが、
\(n\)の最小の素因数\(p\)を取ります。(\(n\)は奇数なので\(p \geq 3\)です。)

 

このとき、\(\frac{2^n+1}{n^2}\)が整数なので
\(2^n \equiv -1 \pmod p\)、そして
\(4^n \equiv 1 \pmod p\)であることがわかります。

 

\(4^{p-1} \equiv 1 \pmod p\)

 

よって、\(n\)と\(p-1\)の公約数が4の位数となるわけですが、
\(p\)は\(n\)の最小の素因数なので、\(\gcd(n,p-1)=1\)です。

 

ここが少しわかりにくいと思うので、解説します。
もし\(n\)と\(p-1\)が2以上の公約数を持ったとすると、
それは\(p-1\)の約数なので\(p\)より小さいことになりますが、
\(p\)は\(n\)の最小の素因数なので、そんな\(n\)の約数は存在しないからです。

 

したがって\(\gcd(n,p-1)=1\)なので、これが4の位数となり、
すなわち\(4 \equiv 1 \pmod p\)が成り立つので、\(p=3\)です。

 

これで\(n\)が3の倍数であることがいえました。

 

というわけで、LTEの補題を使います。

 

\({\rm ord}_p (x^n-y^n) = {\rm ord}_p (x-y)+{\rm ord}_p n\)

 

LTE補題に、\(p=3,x=2,y=-1\)を代入して
\({\rm ord}_3 (2^n-(-1)^n) = {\rm ord}_3 (2-(-1))+{\rm ord}_3 n\)
\({\rm ord}_3 (2^n+1) = {\rm ord}_3 n + 1\)

 

また、\({\rm ord}_3 n^2 = 2{\rm ord}_3 n\)

 

\(\frac{2^n+1}{n^2}\)が整数なので、
\({\rm ord}_3 (2^n+1) \geq {\rm ord}_3 n^2\)より
\({\rm ord}_3 n + 1 \geq 2{\rm ord}_3 n\)
\(1 \geq {\rm ord}_3 n\)
また\(n\)は3の倍数なので\({\rm ord}_3 n \leq 1\)であることから、
\({\rm ord}_3 n = 1\)がわかります。

 

これで\(n\)に結構な制約ができました。

 

こっからどうすればいいのか、僕は手が止まりましたが…。
同じようなステップを進めてみましょう。

 

\(n=3\)のときは問題の条件を満たすので、\(n>3\)と仮定します。

 

\(n\)の2番目に小さい素因数\(q\)を取ります。\(q \geq 5\)です。

 

\(4^n \equiv 1 \pmod q, 4^{q-1} \equiv 1 \pmod q\)
がそれぞれ成り立ち、\(n\)と\(q-1\)の公約数が4の位数となるわけですが、(\(p=3\)の証明と同様)

 

\(\gcd(n,q-1)=1 or 3\)が成り立ちます。(\(q\)は2番目に小さい\(n\)の素因数なので)

 

しかし\(\gcd(n,q-1)=1\)のときは\(4 \equiv 1 \pmod q\)となり\(q=3\)となってしまい、
これはおかしい。

 

なので\(\gcd(n,q-1)=3\)がわかります。
\(4^3\equiv 1\pmod q\)より\(q\)は63の素因数、このうち\(q>3\)を満たすのは\(q=7\)のみです。

 

しかし\(n\)は3の倍数なので\(p=3k\)(\(k\)は整数)とおけ、
\(2^n+1\equiv 2^{3k}+1 \equiv 8^k+1 \equiv 1+1 \equiv 2 \pmod 7\)
となり、これは\(2^n+1\)が\(n^2\)で割り切れることに矛盾します。

 

よって\(n>3\)という仮定が間違っていることがわかり、背理法
解は\(n=3\)のみということがわかります。


結論。
難しい。

実際、LTE補題を使う問題は中~高難度のものばかりです。
もしあなたが高レベルに到達したいと思っているのならば、
これは知っていて損はありません。