数学徘徊記

自由な数学ブログ。

2018APMO受験記

APMO(アジア太平洋数学オリンピック)受験してきました~

APMOとは?

APMO(アジア太平洋数学オリンピック)は、その名の通りアジアと環太平洋地域の国々が参加する数学オリンピックです。
試験の形式は4時間5問で、JMOと同じですね。
国際大会なわけですが海外に行けるわけではなく、試験は国内の会場で受け、その成績を主催国でまとめるという形になっています。
日本では、過去JMO入賞者(高3も含む)のみが試験資格を持つ形です。

問題ごとの感想

1

簡単でした。15分くらいで解けました。図を書くのがやや大変な気がしますが、書いてしまえばもう解けたようなものですね。
共通接線を引く→いろいろそれに乗っていることが分かる→構図→外心 みたいな感じ。

2

実はこれは一番後に解けた問題です。不等式が苦手なので…
\(x\)の周辺でおおむね値が決まる&それ以外はほぼ影響しない ということを証明すればいい感じですね。
けっこうガバガバ評価でいけます(僕は\(>\frac{5}{2}\)の証明を答案に書いた)。最小値はいくらなんでしょうね?

3

グラフについての基本的な知識があれば\(n\)が偶数であることがすぐにわかります。あとは構成ゲー。6個でできたパーツと8個でできたパーツをぐるっとつなげてやる感じで構成しました。最初は全然なさそう…と思っていましたが、ほとんどの偶数でできるというのが分かるとおおおって思いました。割と好きです。

4

まあ「やればできる」問題ですね。構成ゲーに近いところもある気がします。そんなに面白くなかったです。

5

見た目はきれいそうですが、全然わかりませんでした…
ぬさんによると、線形代数で解けるようです。

結果

35点中28点でした。たまたま自分に合った問題が出たおかげですかね。

2018JMO受験記

予選

予選はうまくいったんじゃないでしょうか。
第28回(2018年)JMO予選の問題

問題ごとに感想

問題1

算数パズルみたいで面白いですね。

問題2

1つ1つ数えていけば解けますね。はい。

問題3

まあ長さを変数にして連立方程式を解けばいいんでしょ
→解けない。焦る。
→面積を考えてみたら解かなくてもいいことがわかってわろた

問題4

まあやるだけですね。

問題5

簡単だけど面白い

問題6

まず図を正しくかけてるか何度も確認
→答えが想像以上に汚くなってかなり心配になった

問題7

ぱっと見難しそうだなーってとばしてたけど、よく考えたらそんなに難しくないじゃん

問題8

すこし妥協が必要な問題ですね

問題9

幾何は得意だからなーって思ってやってみて、割と苦戦した

問題10

見た目ヤバいし、10番目だし難しいんだろうなーって思って最後に手を付けた
解けなくてもいいやって思った
→意外とわかることがあって面白い!!

問題11・12

時間もないし、あきらめた

全体の感想

後輩と10問答えが同じで安心。
解いてて楽しかったですね。特に10番とか。
(実際10点だった)

本選

第28回(2018年)JMO本選の問題

時系列順

試験開始
→問題をざっくり見る。
→幾何が2しかないじゃん、つらい
→1番、\(\gcd(a^2b^2+3, a^2+b^2+2)\)とか謎でしかない
→しかも「最後に残った数が平方数でない」ってヤバい
→3番、見た目が気持ち悪い
→4番、マス目に数字を書いてく問題か、苦手だなあ
→5番はしーらね
→2番を考える
→緊張して手が震えて図がうまくかけない
→お菓子を食って緊張をほぐす
→簡単じゃん、つらい(ここまで20分)
→1番に手を付ける
→\(\gcd(a^2b^2+3, a^2+b^2+2)\)をいろいろ計算してみる
→3の倍数ばっかりだなー
→閃く!! 3の倍数の個数の偶奇が変わらない!!
→やったぜ。(ここまで40分)3か4のどちらかを完答したい。
→3番と4番、交互に少しずつ考えながらやっていく
→全然進展しない(ここまで2時間30分)
→頭を冷やすために1番と2番の解答を書く
→3番、周期の約数を考える
→むっちゃいろいろわかる!
→解けた!! やった!!
→4番に移る
→全然わかんねえな、3番の解答を書くか
→4番に戻る
→お!? 解けた!! やった!!
→時間ないし急いで解答かこう
→(書きながら)…あれ?この解答嘘じゃね?
→まあしょうがない、このステップの後を書けば部分点もらえるか
→そのあとのステップも嘘じゃん、つら(残り10分)
→修正できそうにないな、解答の見直しをしよ

問題ごとの感想

問題1

3の倍数の個数に注目すればすぐ解けますが、気づかなければ全然進まないような問題かと思います。
1番級にしては難しいのではないでしょうか。

問題2

幾何の問題に慣れていたのですぐ解けましたが、Twitter上では「難しい」という意見もまあまあありました。

問題3

なかなか見ないタイプの問題で、大変だったと思います。
周期の約数を見るという発想ができるかどうか。
ただ部分点は取りやすい問題だったと思います。

問題4

わかりません

問題5

わかりません、ただ部分点は稼げたかもしれないので、後悔しています。

結果

(18/2/21 追記) 銅賞でした!! やったぜ。

2018JJMO本選模試 解答編

先日公開した2018JJMO本選模試ですが,模範解答を公開します.
公開が遅くなってごめんなさい.
当ブログの記事:
su-hai.hatenablog.com
Dropbox
www.dropbox.com

1

コメント

これはそんなに難しくないですね.
さすがにJJMOにしては簡単すぎかなと思ったのですが,あまりいい感じのレベルの問題がなかったので…
さまざまな解答が考えられますが,どちらにしろ
\[ \left\{\begin{array}{rcl} (x+1)(y+1) & = & z+1 \\
(z+1)(x+1) & = & y+1 \\
(y+1)(z+1) & = & x+1 \end{array} \right.
\]という式変形がミソのようです.

解答例

式変形すると
\[ \left\{\begin{array}{rcl} (x+1)(y+1) & = & z+1  …①\\
(z+1)(x+1) & = & y+1  …②\\
(y+1)(z+1) & = & x+1  …③\end{array} \right.
\]となる.
ここで②を①に代入し整理すると,
\[\begin{array}{rcl} (x+1)^2(z+1) & = & z+1 \\
x(x+2)(z+1) & = & 0 \\
\end{array}\]となるから,次の3つの場合が考えられる.

1. \(x=0\)のとき

\(x=0\)を①に代入すると,\(y=z\).
これを③に代入すると,\((y+1)^2=1\)より,\(y=-2,0\)がわかる.
よって,この場合の解は\((x,y,z)=(0,0,0), (0,-2,-2)\).

2. \(x=-2\)のとき

\(x=-2\)を①に代入すると,\(-(y+1)=z+1\).
これを③に代入すると\(-(y+1)^2=-1\)より,\(y=-2,0\)がわかる.
よって,この場合の解は\((x,y,z)=(-2,-2,0), (-2,0,-2)\).

3. \(z=-1\)のとき

\(z=-1\)を②,③にそれぞれ代入すると,\(x=0,y=0\)がわかる.
よって,この場合の解は\((x,y,z)=(-1,-1,-1)\).
以上より,この連立方程式の解は,
\[(x,y,z)=(0,0,0), (0,-2,-2), (-2,-2,0), (-2,0,-2), (-1,-1,-1)\]である.

2

コメント

これもあまり難しくないかと.標準的なJJMO本選1~2番レベルかと思います.
この問題にはいろいろな解答があるのですが,そのうちの1つを紹介します.

解答例

2つの格子点について,それらの距離が1以下であるとき,それらの格子点は隣り合っているということにする.
もし隣り合った同じ色の格子点が存在しないならば,直線\(y=x,-x\)上に存在する格子点はすべて互いに同じ色である.よって,点\((0,0),(-1,1),(n,n)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.
隣り合った同じ色の格子点が存在するとする.平面上のすべての格子点を平行移動・90°回転移動させても主張は変わらないことから,点\((0,0),(1,0)\)が同じ色だとしてよい.必要ならばすべての格子点の色を入れ替えることにより,点\((0,0),(1,0)\)はともに赤色だとしてよい.
直線\(y=2n\)上に赤色の格子点が存在とき,その点と点\((0,0),(1,0)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.直線\(y=2n\)上の格子点がすべて青色の場合を考える.このとき,直線\(y=0\)上に青い格子点が存在とき,その点と点\((0,2n),(1,2n)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.\(y=0\)上の格子点がすべて赤色のときを考える.このとき点\((n,0)\)が赤色だった場合,その点と点\((0,0),(0,2)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.点\((n,0)\)が青色だった場合は,その点と点\((2n,0),(2n,2)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.
したがって,どの場合も同じ色の頂点を持ち面積が\(n\)である三角形が構成できたので,示すべきことが示された.

3

コメント

多少ステップが必要な幾何の問題です.\(P'\)という少しよくわからないような点をどう扱うかがミソです.

解答例

まずは自分の用意していた解答です.
f:id:yootaamath:20171204104239p:plain:w400
接弦定理より\(\angle TBP = \angle TAK\).また四角形\(PTKB\)は円に内接するので\(\angle TPB = \angle TKA\)である.よって\(\triangle TBP \sim \triangle TAK\)である.
すると\(TB:BP=TA:AK\).ここで,\(BP=BA=AP'\)であるから,\(TA:AK=TB:BP=TB:AP'\)である.よって\(AK:AP'=TA:TB\).
また接弦定理より\(\angle P'AK = \angle BTA\)であるから,\(\triangle P'AK \sim \triangle BTA\).
よって\(\angle P'KA = \angle TAB \).また接弦定理より\(\angle PBT = \angle TAB \)であるから,\(\angle P'KA = \angle PBT \)が示された.

別解

これはお茶の水さんから頂いた解答です.
f:id:yootaamath:20171204102328p:plain:w400
直線\(AT\)と三角形\(PKB\)の外接円の交点のうち\(T\)でないほうを\(X\)とおく.
接弦定理より\(\angle PBT= \angle TAB\).円周角の定理より\(\angle PBT= \angle PXT\).ゆえに\(\angle XAK= \angle TAB= \angle PXT= \angle PXA\)であり,\(PX \parallel AK\)…①.
{PA=PB}より\(\angle PAB= \angle PBA\)なので,{\angle PAX= \angle PAB- \angle TAB= \angle PBA - \angle PBT= \angle TBA}.また,円周角の定理より\(\angle TXK= \angle TBK\).ゆえに\(\angle PAX= \angle TB A= \angle TXK\)であり,\(AP \parallel KX\)…②.
①,②より四角形\(APXK\)は平行四辺形.
したがって\(AK=PX\)であり,これと\(P'A=AP\),\(\angle P'AK = \angle APX\)より\(\triangle P'AK \equiv \triangle APX\).
よって\(\angle PBT= \angle PXA= \angle AKP'\)である.

4

コメント

この問題はまあまあ難しいです.解けたらけっこうな実力があると思います.
\((n,p)=(11,37)\)っていう解もあるというのが面白いところ。
代数的整数論でも解けそうな気がしなくもないですが(楕円曲線とか使えばできそう),これはもちろん初等的に解くことができます.

解答例

\(p\)は素数より,\(p \ge 2\)であるから
\[ \begin{array}{rcl}
n^3 &=& p^2-p-1 \\
&=& p(p-1)-1 \\
& \ge & 2 \cdot 1 -1 = 1
\end{array} \]よって\(n\)は正である。
式変形すると
\[(n+1)(n^2-n+1)=p(p-1)\]となる.
\(p\)は素数であるから,\(p\)は\(n+1,n^2+n+1\)の少なくとも一方を割り切る.

1. \(p\)が\(n+1\)を割り切るとき

\(p,n+1\)はともに正であるから,\(n+1 \ge p\)である.すると
\[ \begin{array}{rcl}
n^3 &=& p^2-p-1 \\
& \le & (n+1)^2-(n+1)-1 \\
&=& n^2+n-1 \\
(n-1)^2(n+1) & \le & 0
\end{array} \] \(n>0\)より,この不等式を満たすのは\(n=1\)のみ.\(n+1 \ge p\)より\(2\ge p\)となり,これを満たす素数\(p\)は\(p=2\)のみである.これは\(n^3=p^2-p-1\)を満たすので,これがこの場合の唯一の解である.

2. \(p\)が\(n^2-n+1\)を割り切るとき

\(n^2-n+1=(n-\frac{1}{2})^2+\frac{3}{4}>0\)であるから,\(n^2-n+1\)は正の整数\(k\)を用いて\(n^2-n+1=kp\)と表せる.これを\((n+1)(n^2-n+1)=p(p-1)\)に代入すると\(k(n+1)=p-1\).よって
\[ \begin{array}{rcl}
n^2-n+1 &=& kp \\
&=& k\{k(n+1)+1\} \\
&=& k^2n+k^2+k \\
n^2-(k^2+1)n-(k^2+k- 1) &=& 0 …①
\end{array} \]これを\(n\)についての2次方程式とみると,これは整数解を持つ必要があるため,判別式\(D\)は平方数とならなければならない.
よって,
\[ \begin{array}{rcl}
D &=& \{-(k^2+1)\}^2-4 \cdot 1 \cdot \{-(k^2+k- 1)\} \\
&=& k^4+6k^2+4k-3 \\
&=& (k^2+3)^2+4k-12
\end{array} \]は平方数である.
\(k=1,2,3\)のとき\(D=8,45,144\)となるので,\(k=3\)のとき\(D\)は平方数となる.
\(k \ge 4\)のとき,\(4k-12>0\)より\(D>(k^2+3)^2\),また
\[ \begin{array}{rcl}
(k^2+4)^2-D &=& 2k^2-4k+19 \\
&=& 2(k- 1)^2+17>0
\end{array} \]より\(D<(k^2+4)^2\)である.したがって,\(k \ge 4\)の場合は,\(D\)は2つの隣り合った平方数の間に存在するため,平方数とならない.よって,\(D\)が平方数となるのは\(k=3\)のときのみである.これを①に代入すると,
\[ \begin{array}{rcl}
n^2-10n-11 &=& 0 \\
(n+1)(n-11)&=& 0
\end{array} \]となる.
\(n\)は正であるため,\(n=11\)となる.これと元の条件より
\[ \begin{array}{rcl}
p^2-p-1&=&11^3 \\
(p+36)(p-37)&=&0
\end{array} \]より,条件を満たす素数\(p\)は\(p=37\)である.
以上より,条件を満たすのは\((n,p)=(1,2),(11,37)\)である.

5

コメント

この問題も難しいです.塗り分けの発想を使うのですが,こんな塗り分け思いつかないだろ!って感じです.正直,僕も思いつきませんでした.
市松模様+αみたいな感じでしょうか.
解答でまずい部分があったら指摘お願いします.

解答例

問題の条件をみたすような\(n\)は存在しないことを示す.

1 2 1 2 1 2 1 2
4 3 4 3 4 3 4 3
3 4 3 4 3 4 3 4
2 1 2 1 2 1 2 1

上の表のように,マス目に数字を記入する.このとき,マス目には1~4の数字が\(n\)個ずつ書かれている.
また,1回の操作で,1と書かれたマスからは4と書かれたマスに,2と書かれたマスからは3と書かれたマスに,3と書かれたマスからは2か4と書かれたマスに,4と書かれたマスからは1か3と書かれたマスにのみ移動できる.
すべてのマスを一回ずつ通るような動かし方が存在すると仮定する.1か2の書かれたマスの数と,3か4の書かれたマスの数は等しい.しかし,1か2の書かれたマスからは3か4の書かれたマスにしか移動できないので,3か4の書かれたマスからは1か2の書かれたマスに移動させていることがわかる.しかし,それでは,もし3と書かれたマスから駒を動かし始めたとき,1→3→1→3→…となり,2か4と書かれたマスに移動できない.2,3,4から動かし始めた場合も同様.よって矛盾.背理法より,そのような\(n\)が存在しないことが示された.

反転幾何まとめ

追記:この記事をリメイクしました.以下のリンクをご覧ください.
gochisuu.netlify.app

この記事では,反転幾何とその構図について解説しています.

反転とは? & 反転の重要な性質

mathtrain.jp
この記事は,反転の初歩について非常によくまとめられているので,そちらをご覧ください.

特に,

反転によって,
1−1:原点を通る直線は原点を通る直線にうつる
1−2:原点を通らない直線は原点を通る円にうつる
1−3:原点を通る円は原点を通らない直線にうつる
1−4:原点を通らない円は原点を通らない円にうつる

2:反転によって接する,接しないという状況は変わらない

3:反転円と直交する円は反転によって変わらない

これらの性質はとても重要なので,覚えておいてください.

また,これらの事実から,次の主張がわかります:

点\(A,B,C,D\)を反転した点\(A',B',C',D'\)が同一円周上または同一直線状にあることと,点\(A,B,C,D\)が同一円周上または同一直線状にあることは同値である.

そして,方べきの定理から,次の主張も容易にわかります:

点\(A,B\)を反転した点\(A',B'\)において,\(A,B,A',B'\)は同一円周上または同一直線状にある.

反転と構図

構図1

命題.点\(P\)から円\(\Gamma\)に接線が引かれていて,それぞれの円との接点をそれぞれ\(A,B\)とする.点\(A,B\)の中点を点\(M\)とするとき,点\(P\)を円\(\Gamma\)により反転すると点\(M\)に移る.

証明)円\(\Gamma\)の中心を\(O\)とする.点\(O,M,P\)が一直線上にあることは明らか.このとき,\(\angle OAP=\angle OMA=90^\circ\)より\(\triangle OAP \sim \triangle OMA\).よって\(OM:OA=OA:OP\)より\(OP\cdot OM=OA^2\)となり結果が従う.

構図2

命題.三角形\(ABC\)において,内接円を\(\omega\),外接円を\(\Omega\)とする.また,\(\omega\)と辺\(BC, CA, AB\)の接点をそれぞれ\(D, E, F\)とする.このとき,\(\Omega\)を\(\omega\)により反転すると,三角形\(DEF\)の九点円に移る.

これは構図1より明らかです.
九点円については九点円 - Wikipediaを参照してください.

構図3

命題.鋭角三角形ABCにおいて,頂点\(A, B, C\)から対辺におろした垂線の足を\(D, E, F\)とし,垂心を\(H\)とする.このとき,\(A\)を中心に半径\(\sqrt{AF\cdot AB}\)の円により反転すると,点\(B, D, C\)はそれぞれ点\(F, H, E\)に移る.逆も同様.

これは方べきの定理より明らかです.しかしこの反転,よく使うので覚えておいてください.

構図4

命題.鋭角三角形ABCにおいて,頂点\(A, B, C\)から対辺におろした垂線の足を\(D, E, F\)とし,垂心を\(H\)とする.このとき,\(H\)を中心に半径\(\sqrt{HA\cdot HB}\)の円により反転して,\(H\)を中心に対称移動すると,点\(A, B, C\)はそれぞれ点\(D, E, F\)に移る.逆も同様.

前の構図とほとんど同じです.これもよく使います.

反転の感覚

反転したくなる問題

  • 円が多い
  • 円の中心を通る円が出てくる
  • 円がある一点をむっちゃ通っている
  • 円どうしが接する
  • 垂心とか垂線の足とか
  • 内接円と外接円

反転しにくい問題

  • 円よりも直線が多い
  • 中点がたくさんあるなど,辺の長さの条件が多い

それと

「今ある円で反転する」という固定概念は捨ててください.どちらかといえば中心点が本質なので「ここでなんか反転したらよさそうだぜ!」という感じです.感覚です.

例題

問題

JJMO本選 2017-5
鋭角三角形\(ABC\)があり, その垂心を\(H\)とする. 3点\(A,B,C\)から対辺におろした垂線の足をそれぞれ\(D,E,F\)とする. 三角形\(ACD\)の外接円と線分\(BE\)の交点を\(P\), 三角形\(ABD\)の外接円と線分\(CF\)の交点を\(Q\)とする. また, 三角形\(ABH\)の外接円と線分\(DF\)の交点を\(S\), 三角形\(AC H\)の外接円と線分\(DE\)の交点を\(T\)とする. このとき, 4点\(P,Q,S,T\)は同一円周上にあることを示せ.

思考過程

めちゃくちゃ点\(A\)を通っている.\(A\)で反転したみ.
特に反転たらまずそうな条件とかないし,\(A\)で反転しよう.構図3も使える.
まず\(P\)を反転しよう.すると「直線\(HE\)と三角形\(AF C\)の外接円の交点」…?
おい!それってYO!点\(P\)じゃんか!
つまり点\(P\)は反転で不動なので,反転する円上にあるんだな.
次に点\(Q, S, T\)について… ってか全部反転で不動じゃないか!
で示すべきことが「 4点\(P,Q,S,T\)は同一円周上にあることを示せ」…てか全部反転する円にあるってことがわかってる!よっしゃ!

練習問題

簡単な順になるようにしています(自分の主観が大きいのでそこはご了承を)
JMO系多くてごめんなさい…
また見つけ次第追加します

JMO予選 2013-8
凸四角形\(ABCD\)があり,\(AC\)と\(BD\)が点\(X\)で直交していて,\(AX=5,BX=6,CX=20\)が成り立っている.\(A\)を中心とし\(AX\)を半径とする円,\(B\)を中心とし\(BX\)を半径とする円,\(C\)を中心とし\(CX\)を半径とする円,\(D\)を中心とし\(DX\)を半径とする円をそれぞれ\(C_1,C_2,C_3,C_4\)とする.4つの円\(C_1,C_2,C_3,C_4\)すべてに接する円が存在するとき,\(DX\)を求めよ.
ただし,\(YZ\)で線分\(YZ\)の長さを表すものとする.

Korea National Olympiad 2014-3
円\(O\)と,その直径ではない弦\(AB\)がある.\(A,B\)それぞれでの\(O\)の接線は点\(C\)で交わっている.線分\(AC,BC\)の中点をそれぞれ\(M,N\)とする.\(C\)を通り,\(O\)に外接する円が直線\(MN\)と点\(P,Q\)で交わっている.このとき,\(\angle PCQ = \angle CAB\)を示せ.

EGMO 2016-4
半径の等しい2つの円\(\omega_1, \omega_2\)が異なる点\(X_1,X_2\)で交わっている.円\(\omega\)は\(\omega_1\)と点\(T_1\)で外接し,\(\omega_2\)と点\(T_2\)で内接する.このとき,直線\(X_1T_1,X_2T_2\)は\(\omega\)上の点で交わることを示せ.

Iran MO 1996(注:2018/02/01 問題に不備があったため修正しました)
直径\(AB\),中心\(O\)の半円\(\omega\)上に点\(C, D\)が,直線\(AB\)上に点\(M\)がある.そして点\(M, C, D\)は一直線上にあり,\(MA>MB\),\(MC>MD\)を満たしている.三角形\(OAC, OBD\)の外接円の交点のうち点\(O\)でないほうを\(K\)とおく.このとき\(\angle MKO=90^\circ\)を示せ.

Russian MO 2009
三角形\(ABC\)において,外接円を\(\Omega\),\(\angle BAC\)の二等分線と辺\(BC\)の交点を\(D\)とする.また,直線\(AD\)と\(\Omega\)の交点のうち,\(A\)でないほうを\(E\)とする.また,\(DE\)を直径とする円と\(\Omega\)の交点のうち,\(E\)でないほうを\(P\)とする.辺\(BC\)の中点を\(M\)とするとき,\(\angle BAP=\angle MA C\)を示せ.

IMO 1996-2
三角形ABCの内部に,\(\angle APB-\angle ACB = \angle AP C- \angle ABC\)を満たすように点\(P\)をとる.三角形\(APB, AP C\)の内心をそれぞれ\(D,E\)とする.このとき,直線\(AP, BD, CE\)は一点で交わることを示せ.

JMO本選 2015-4
二等辺三角形でない三角形\(ABC\)があり,その外接円を\(\Gamma\),内心を\(I\)とおく.また,三角形\(ABC\)の内接円と辺\(AB,AC\)の接点をそれぞれ\(D,E\)とおく.三角形\(BEI\)の外接円と\(\Gamma\)の交点のうち\(B\)でない方を\(P\),三角形\(C DI\)の外接円と\(\Gamma\)の交点のうち\(C\)でない方を\(Q\)とするとき,4点\(D,E,P,Q\)は同一円周上にあることを示せ.

JMO予選 2011-11
四角形\(ABCD\)が,点\(O\)を中心とする円に外接しており,\(OA=5,OB=6,OC=7,OD=8\)が成立している.線分\(AC\)の中点を\(M\),線分\(BC\)の中点を\(N\)とするとき,\(OM:ON\)を求めよ.
ただし,\(XY\)で線分\(XY\)の長さを表すものとする.

imomathより
三角形\(ABC\)において,\(p=\cfrac{AB+BC+CA}{2}\)とする.直線\(BC\)上に,異なる2点\(E,F\)を\(AE=AF=p\)を満たすようにとる.このとき,三角形\(AEF\)の外接円は,三角形\(ABC\)の\(\angle A\)内の傍接円に接することを示せ.

構図
三角形\(ABC\)において,円\(\omega\)は,辺\(AB, AC\)と接し,三角形\(ABC\)の外接円と点\(P\)で内接している.また,\(\angle A\)内の傍接円と辺\(BC\)の接点を\(Q\)とする.このとき,\(\angle BAP= \angle CAQ\)を示せ.

Canada MO 2017-5
三角形\(ABC\)の内接円は,辺\(BC,CA,AB\)とそれぞれ点\(D,E,F\)で接している.\(\omega, \omega_1, \omega_2, \omega_3\)はそれぞれ三角形\(ABC, AEF, BDF, CDE\)の外接円とする.
(a) \(\omega_1, \omega_2, \omega_3\)はある一点を通ることを示せ.
(b) 直線\(PD, Q E, RF\)は一点で交わることを示せ.

自作
円\(\Omega\)に内接する四角形\(ABCD\)において,直線\(AB\)と\(CD\)は点\(E\)で,直線\(AD\)と\(BC\)は点\(F\)で交わっている.このとき,点\(E, F\)を通り,円\(\Omega\)に接する円は2つ存在するが,それらの半径は等しいことを示せ.

IMO 2015-3
鋭角三角形ABCは\(AB>AC\)をみたしている.三角形\(ABC\)の外接円を\(\Gamma\),垂心を\(H\),\(A\)から対辺におろした垂線の足を\(F\)とおく.また,辺\(BC\)の中点を\(M\)とおく.点\(Q\)を\(\Gamma\)上の点で\(\angle HQA=90^\circ\)をみたすものとし,点\(K\)を\(\Gamma\)上の点で\(\angle HKQ=90^\circ\)をみたすものとする.\(A,B,C,K,Q\)は相異なる点であり,この順に\(\Gamma\)上にあるものとする.
このとき,三角形\(KQH\)の外接円と三角形\(FKM\)の外接円はたがいに接することを示せ.

有名問題
三角形\(ABC\)において,外心を\(O\),\(\angle A\)内の傍心を\(I_A\)とする.また,\(\angle ABC, \angle ACB\)の二等分線は辺\(AC, AB\)とそれぞれ点\(D, E\)で交わっている.このとき\(DE\perp OI_A\)を示せ.

フォイエルバッハの定理
三角形の九点円と内接円は接することを示せ.(激難)

Twitterで話題となった謎解きの作者、ちーたーさんにインタビュー

Twitterで話題となったこの謎解き。


今回はこの謎解きの作者、「ちーたー」さんにインタビューしてきました!

だま(以下「だ」):こんにちは。
ちーたーさん(以下「ち」):こんにちは。
だ:今何年生ですか。
ち:中学3年生です。
だ:どんな学校にいますか。
ち:中高一貫の男子校に在籍しています。

謎解きについて

だ:謎解きはよく製作されるのですか?
ち:はい。私自身、謎解きを解くのが好きなので、良く製作しています。
だ:謎解きが好きなんですね。
ち:はい、大好きです。「今夜はナゾトレ」などの番組をよく見ています。
だ:「今夜はナゾトレ」ですか。
ち:はい。東大生が制作した謎解きや、視聴者から寄せられた謎解きが出題される番組です。実は、私の制作した謎解きが掲載されたこともあるんですよ。夏休みの終わりごろです。
だ:すごい…!話は変わりますが、脱出ゲームなどの参加型コンテンツに参加したことはありますか。
ち:実はまだ行ったことがありません。

この謎解きについて

だ:そういえば、Twitterに載せたあの謎解き、とても伸びましたね。私も解いてみましたが、とても面白い問題でした。
ち:ありがとうございます。私自身、伸びても30RT前後かなと思っていたのですが、ここまで伸びるとは思ってもいませんでした。
だ:この謎解きはどのように思いついたのでしょうか。
ち:まず、家の形と上向きの矢印の形が似ていることに注目しました。そこから、「いえ」と「うえ」だな、あ、「あいうえお」じゃん!と気づき、この謎解きを制作しました。実は、この謎解きのヒントになった謎解きがあるんです。
だ:というと?
ち:1月31日の「今夜はナゾトレ」の問題です。答えが「すみ」になるのですが、「?」が墨で書かれたような書体になっているんですね。そこから、この問題で「?」を青くするというアイデアに至りました。
だ:なるほど。今後もこのような謎解きをツイートしていく予定ですか。
ち:いい問題ができたら、ですね(笑)「今夜はナゾトレ」にもいろいろ謎解きを投稿しているので、使用済み問題をツイートしていくと思います。

数学

だ:Twitterのプロフィール欄に「数学」と書かれていましたが、数学も好きなんですか。
ち:はい。特に数学の問題を解くのが好きで、よく数学オリンピックなどの問題を解いています。
だ:なるほど。数学の大会には参加されていますか。
ち:はい。いくつかの数学の大会で、上位に入れたこともあります。
だ:すごいですね。ところで、印象に残っている好きな問題はありますか。
ち:算数の問題なのですが、「算数にチャレンジ!!」の第378回の問題です。http://www.sansu.org/used-html/index378.html
だ:ほう…。ありがとうございます。解いてみます。
だ:謎解きと数学、両方好きだということですが、共通するところはあるのでしょうか。
ち:はい。謎解きでも数学でも、必要な知識は少ないです。しかし、考えさせるような問題がたくさんできます。このようなところに私は惹かれます。
だ:なるほど。ありがとうございます。

だ:最後に言いたいことはありますか。
ち:重要なことなので言っておきます。「解答やヒント等のリプはお控えください」。
だ:本日はどうもありがとうございました。
ち:ありがとうございました。

数学オリンピック対策用のリンク集

忘備録。

過去問集や本も出版されているものの、
「それだけでは足りない!」「お金をかけずに対策したい!」
という人のためにも。

日本数学オリンピック入賞~国際数学オリンピック入賞くらいのレベルを想定。

英語で書かれたサイトも多いですが、少し言い回しや単語を覚えれば読むのはそんなに苦ではないので、ぜひ読んでみてほしいと思っています。

問題集

日本数学オリンピック委員会の出してるもの。
JMO・JJMO・IMO・APMO・EGMOなどの問題がある。
日本語。
国内大会・国際大会の問題

こちらはIMOのほうが出しているもの。
Shortlist (IMOの候補問題) などがある。
英語。
International Mathematical Olympiad

さまざまな国の様々な数学の大会の問題が載ってるすごいやつ。
しかも問題ごとにいろいろな人の解答が見れる。
英語。
Community - Art of Problem Solving

これは安藤哲哉さんというおそらく数オリ関係者が書いているもの。
少し前のJMO・APMO・IMOと、日本代表選抜の問題がある。
日本語。
のホームページにようこそ Tetsuya ANDO Home Page

APMOの問題・解答集
英語
Asian Pacific Mathematics Olympiad

Canada MOの問題・解答集
英語
Canadian Mathematical Olympiad

柳田五夫さんのpdf集
ページ数が多いので注意。
日本語
http://izumi-math.jp/I_Yanagita/I_Yanagita.html

学習用

いろいろまとまっている。
誰が書いているのかは知らないけど(フォーラムみたいな感じっぽい)。
英語。
IMOmath: Olympiad Training Materials

カナダの合宿に使われた教材が沢山あるサイト。
英語。
Canada IMO Training

競技数学で強い方たちのPDF。
どれも英語。
Math Olympiad training handouts
Math Olympiad teaching notes
Evan Chen &bullet; Olympiad
Math Competitions - Alexander Remorov
Yi Sun's Teaching Page

2018JJMO本選模試

ついに、、2018JJMO本選模試、、公開しました!!!

近年のJJMOの傾向を研究し、海外の数学オリンピックの問題から問題を選びました。

問題

f:id:yootaamath:20171109164300p:plain

Dropbox:
www.dropbox.com

出典:

  1. Canada MO 2004-1
  2. IZhO 2015-1
  3. Iran MO 2nd 2013-4
  4. ITAMO 2011-5
  5. 出典不明

近年の傾向について

JJMOの本選は5題4時間、すべて記述式です。
例年、1番から5番の順に簡単な順に並んでいるようですが、絶対にそうなわけではないので、参考程度に思ったほうがいいです。
特にJJMOの場合顕著です。たとえば2017年のJJMOは、いつも激ムズのはずの5番に割と簡単な幾何問題が出ています。

では傾向を見ていきましょう。
代数:A、整数論:N、幾何:G、組合せ:C であらわしています。
2つの文字の場合、それは融合問題です。

'09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 '16 '17
1 N CG G G A N G G C
2 G N N N CA A A C N
3 C A G C N G C A A
4 A G N G G C G G A
5 G C C C C N CG C G

こんな感じです(ミスがあったらごめんなさい。)

JJMOはまだまだ出来立ての大会なので、最初のほうは手探り状態でしょうか。
それをふまえて、傾向を見ていくこととします。

まず、2011年は例外ですが、1~4問目にC分野が出ていることがわかります。今年も出るでしょう。5番の難問として出る率も高いと思われます。
また近年、A分野の問題がよく出題されているようです(とくに2017年は2問も!)。今年は1~2番目に出る可能性が高いと思われます。わりとダークホース的に5番目にAが出るかもしれません。
G分野は毎年出ています。今年も出るんじゃないですか(適当)
N分野は、2017年で2年ぶりに出たようです。今年は出るのかわかりませんが、3~4番目に出てもおかしくないのかなあと思います。

というわけで、今年の予想はこれです。

'18 (予想)
1 A (C)
2 C (A)
3 G (N)
4 N (G)
5 C (A)

(かっこ外は本命、内は対抗)

これを踏まえて、AoPSから問題を引っ張り出してきました。
5番の「出典不明」っていう問題は、学校の先生が教えてくれた問題です。何かの本から引っ張り出した問題のようですが、その本がわからないので、誰かわかる人がいたら教えてください。