数学徘徊記

自由な数学ブログ。

2018JJMO本選模試 解答編

先日公開した2018JJMO本選模試ですが,模範解答を公開します.
公開が遅くなってごめんなさい.
当ブログの記事:
su-hai.hatenablog.com
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これはそんなに難しくないですね.
さすがにJJMOにしては簡単すぎかなと思ったのですが,あまりいい感じのレベルの問題がなかったので…
さまざまな解答が考えられますが,どちらにしろ
\[ \left\{\begin{array}{rcl} (x+1)(y+1) & = & z+1 \\
(z+1)(x+1) & = & y+1 \\
(y+1)(z+1) & = & x+1 \end{array} \right.
\]という式変形がミソのようです.

解答例

式変形すると
\[ \left\{\begin{array}{rcl} (x+1)(y+1) & = & z+1  …①\\
(z+1)(x+1) & = & y+1  …②\\
(y+1)(z+1) & = & x+1  …③\end{array} \right.
\]となる.
ここで②を①に代入し整理すると,
\[\begin{array}{rcl} (x+1)^2(z+1) & = & z+1 \\
x(x+2)(z+1) & = & 0 \\
\end{array}\]となるから,次の3つの場合が考えられる.

1. \(x=0\)のとき

\(x=0\)を①に代入すると,\(y=z\).
これを③に代入すると,\((y+1)^2=1\)より,\(y=-2,0\)がわかる.
よって,この場合の解は\((x,y,z)=(0,0,0), (0,-2,-2)\).

2. \(x=-2\)のとき

\(x=-2\)を①に代入すると,\(-(y+1)=z+1\).
これを③に代入すると\(-(y+1)^2=-1\)より,\(y=-2,0\)がわかる.
よって,この場合の解は\((x,y,z)=(-2,-2,0), (-2,0,-2)\).

3. \(z=-1\)のとき

\(z=-1\)を②,③にそれぞれ代入すると,\(x=0,y=0\)がわかる.
よって,この場合の解は\((x,y,z)=(-1,-1,-1)\).
以上より,この連立方程式の解は,
\[(x,y,z)=(0,0,0), (0,-2,-2), (-2,-2,0), (-2,0,-2), (-1,-1,-1)\]である.

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これもあまり難しくないかと.標準的なJJMO本選1~2番レベルかと思います.
この問題にはいろいろな解答があるのですが,そのうちの1つを紹介します.

解答例

2つの格子点について,それらの距離が1以下であるとき,それらの格子点は隣り合っているということにする.
もし隣り合った同じ色の格子点が存在しないならば,直線\(y=x,-x\)上に存在する格子点はすべて互いに同じ色である.よって,点\((0,0),(-1,1),(n,n)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.
隣り合った同じ色の格子点が存在するとする.平面上のすべての格子点を平行移動・90°回転移動させても主張は変わらないことから,点\((0,0),(1,0)\)が同じ色だとしてよい.必要ならばすべての格子点の色を入れ替えることにより,点\((0,0),(1,0)\)はともに赤色だとしてよい.
直線\(y=2n\)上に赤色の格子点が存在とき,その点と点\((0,0),(1,0)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.直線\(y=2n\)上の格子点がすべて青色の場合を考える.このとき,直線\(y=0\)上に青い格子点が存在とき,その点と点\((0,2n),(1,2n)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.\(y=0\)上の格子点がすべて赤色のときを考える.このとき点\((n,0)\)が赤色だった場合,その点と点\((0,0),(0,2)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.点\((n,0)\)が青色だった場合は,その点と点\((2n,0),(2n,2)\)を結んで三角形を作れば,それは条件を満たす.
したがって,どの場合も同じ色の頂点を持ち面積が\(n\)である三角形が構成できたので,示すべきことが示された.

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多少ステップが必要な幾何の問題です.\(P'\)という少しよくわからないような点をどう扱うかがミソです.

解答例

まずは自分の用意していた解答です.
f:id:yootaamath:20171204104239p:plain:w400
接弦定理より\(\angle TBP = \angle TAK\).また四角形\(PTKB\)は円に内接するので\(\angle TPB = \angle TKA\)である.よって\(\triangle TBP \sim \triangle TAK\)である.
すると\(TB:BP=TA:AK\).ここで,\(BP=BA=AP'\)であるから,\(TA:AK=TB:BP=TB:AP'\)である.よって\(AK:AP'=TA:TB\).
また接弦定理より\(\angle P'AK = \angle BTA\)であるから,\(\triangle P'AK \sim \triangle BTA\).
よって\(\angle P'KA = \angle TAB \).また接弦定理より\(\angle PBT = \angle TAB \)であるから,\(\angle P'KA = \angle PBT \)が示された.

別解

これはお茶の水さんから頂いた解答です.
f:id:yootaamath:20171204102328p:plain:w400
直線\(AT\)と三角形\(PKB\)の外接円の交点のうち\(T\)でないほうを\(X\)とおく.
接弦定理より\(\angle PBT= \angle TAB\).円周角の定理より\(\angle PBT= \angle PXT\).ゆえに\(\angle XAK= \angle TAB= \angle PXT= \angle PXA\)であり,\(PX \parallel AK\)…①.
{PA=PB}より\(\angle PAB= \angle PBA\)なので,{\angle PAX= \angle PAB- \angle TAB= \angle PBA - \angle PBT= \angle TBA}.また,円周角の定理より\(\angle TXK= \angle TBK\).ゆえに\(\angle PAX= \angle TB A= \angle TXK\)であり,\(AP \parallel KX\)…②.
①,②より四角形\(APXK\)は平行四辺形.
したがって\(AK=PX\)であり,これと\(P'A=AP\),\(\angle P'AK = \angle APX\)より\(\triangle P'AK \equiv \triangle APX\).
よって\(\angle PBT= \angle PXA= \angle AKP'\)である.

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この問題はまあまあ難しいです.解けたらけっこうな実力があると思います.
\((n,p)=(11,37)\)っていう解もあるというのが面白いところ。
代数的整数論でも解けそうな気がしなくもないですが(楕円曲線とか使えばできそう),これはもちろん初等的に解くことができます.

解答例

\(p\)は素数より,\(p \ge 2\)であるから
\[ \begin{array}{rcl}
n^3 &=& p^2-p-1 \\
&=& p(p-1)-1 \\
& \ge & 2 \cdot 1 -1 = 1
\end{array} \]よって\(n\)は正である。
式変形すると
\[(n+1)(n^2-n+1)=p(p-1)\]となる.
\(p\)は素数であるから,\(p\)は\(n+1,n^2+n+1\)の少なくとも一方を割り切る.

1. \(p\)が\(n+1\)を割り切るとき

\(p,n+1\)はともに正であるから,\(n+1 \ge p\)である.すると
\[ \begin{array}{rcl}
n^3 &=& p^2-p-1 \\
& \le & (n+1)^2-(n+1)-1 \\
&=& n^2+n-1 \\
(n-1)^2(n+1) & \le & 0
\end{array} \] \(n>0\)より,この不等式を満たすのは\(n=1\)のみ.\(n+1 \ge p\)より\(2\ge p\)となり,これを満たす素数\(p\)は\(p=2\)のみである.これは\(n^3=p^2-p-1\)を満たすので,これがこの場合の唯一の解である.

2. \(p\)が\(n^2-n+1\)を割り切るとき

\(n^2-n+1=(n-\frac{1}{2})^2+\frac{3}{4}>0\)であるから,\(n^2-n+1\)は正の整数\(k\)を用いて\(n^2-n+1=kp\)と表せる.これを\((n+1)(n^2-n+1)=p(p-1)\)に代入すると\(k(n+1)=p-1\).よって
\[ \begin{array}{rcl}
n^2-n+1 &=& kp \\
&=& k\{k(n+1)+1\} \\
&=& k^2n+k^2+k \\
n^2-(k^2+1)n-(k^2+k- 1) &=& 0 …①
\end{array} \]これを\(n\)についての2次方程式とみると,これは整数解を持つ必要があるため,判別式\(D\)は平方数とならなければならない.
よって,
\[ \begin{array}{rcl}
D &=& \{-(k^2+1)\}^2-4 \cdot 1 \cdot \{-(k^2+k- 1)\} \\
&=& k^4+6k^2+4k-3 \\
&=& (k^2+3)^2+4k-12
\end{array} \]は平方数である.
\(k=1,2,3\)のとき\(D=8,45,144\)となるので,\(k=3\)のとき\(D\)は平方数となる.
\(k \ge 4\)のとき,\(4k-12>0\)より\(D>(k^2+3)^2\),また
\[ \begin{array}{rcl}
(k^2+4)^2-D &=& 2k^2-4k+19 \\
&=& 2(k- 1)^2+17>0
\end{array} \]より\(D<(k^2+4)^2\)である.したがって,\(k \ge 4\)の場合は,\(D\)は2つの隣り合った平方数の間に存在するため,平方数とならない.よって,\(D\)が平方数となるのは\(k=3\)のときのみである.これを①に代入すると,
\[ \begin{array}{rcl}
n^2-10n-11 &=& 0 \\
(n+1)(n-11)&=& 0
\end{array} \]となる.
\(n\)は正であるため,\(n=11\)となる.これと元の条件より
\[ \begin{array}{rcl}
p^2-p-1&=&11^3 \\
(p+36)(p-37)&=&0
\end{array} \]より,条件を満たす素数\(p\)は\(p=37\)である.
以上より,条件を満たすのは\((n,p)=(1,2),(11,37)\)である.

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この問題も難しいです.塗り分けの発想を使うのですが,こんな塗り分け思いつかないだろ!って感じです.正直,僕も思いつきませんでした.
市松模様+αみたいな感じでしょうか.
解答でまずい部分があったら指摘お願いします.

解答例

問題の条件をみたすような\(n\)は存在しないことを示す.

1 2 1 2 1 2 1 2
4 3 4 3 4 3 4 3
3 4 3 4 3 4 3 4
2 1 2 1 2 1 2 1

上の表のように,マス目に数字を記入する.このとき,マス目には1~4の数字が\(n\)個ずつ書かれている.
また,1回の操作で,1と書かれたマスからは4と書かれたマスに,2と書かれたマスからは3と書かれたマスに,3と書かれたマスからは2か4と書かれたマスに,4と書かれたマスからは1か3と書かれたマスにのみ移動できる.
すべてのマスを一回ずつ通るような動かし方が存在すると仮定する.1か2の書かれたマスの数と,3か4の書かれたマスの数は等しい.しかし,1か2の書かれたマスからは3か4の書かれたマスにしか移動できないので,3か4の書かれたマスからは1か2の書かれたマスに移動させていることがわかる.しかし,それでは,もし3と書かれたマスから駒を動かし始めたとき,1→3→1→3→…となり,2か4と書かれたマスに移動できない.2,3,4から動かし始めた場合も同様.よって矛盾.背理法より,そのような\(n\)が存在しないことが示された.