数学徘徊記

自由な数学ブログ。

初等的解法の存在する角度の問題

日曜数学 Advent Calendar 2018 の11日目の記事です。
adventar.org

はじめに

これは名大の日本数学コンクール論文賞に応募したものです。
11月24日の名古屋大学の数理ウェーブで発表した内容です。

論文内容

数理ウェーブでの発表に用いたスライドです。
www.dropbox.com

論文よりもこちらのほうがまとまっているので。。。

概要

https://www.gensu.co.jp/saito/challenge/pdf/3circumcenter_d20180609.pdf
上の論文をもとに作成しました。

上の論文において、整角四角形の問題を、各線分の長さの等しい折れ線の問題に置き換えることで解いています。

ここで私は、その折れ線を代数的な考察をしやすくするために言い換えました。
具体的には、折れ線を第\(n\)次巡回群\(G=\{1,g,g^2,\dots,g^{n-1}\}\)の群環\(\mathbb{Q}[G]\)の要素とみなし、環準同型\(f:\mathbb{Q}[G]\rightarrow \mathbb{C}\)を\(g\mapsto \exp(2\pi i/n)\)と定めました。
(いきなり折れ線を複素数で入れ替えると折れ線の形の情報が失われてしまうと考えました。また失われた情報(みたいなやつ)が本質だと考えました。)
(今思うと\(\mathbb{Q}[x]/(x^n-1)\)としたほうがわかりやすかったような…実質同じですが)
そして折れ線の始点と終点を結ぶ直線の実数軸となす角度を求める問題は、\(\textbf{g}\in \mathbb{Q}[G]\)が与えられたときに\(f(\textbf{g})\)の偏角を求める問題と言い換えられます。
これはさすがに答えが有理数\(q\)を用いて\(2\pi q\)と表せる場合でないと初等的に解けないので、「\(\textbf{g}\in \mathbb{Q}[G]\)と整数\(k\)が与えられたときに\(f(\textbf{g})\)の偏角が\(2\pi k/n\)であることを示せ」という問題にします。これは\(\ker f\)の構造がわかるとうれしい問題で、実は\(\ker f\)が正多角形の組み合わせで表せるもの全体になっていることが言えてしまうため、その折れ線の問題が初等的に解けることが示されます。
(論文発表後に気づきましたが、arlie_reさんのブログにその証明とほとんど同じことが書いてありました。)
また、四角形の問題に限らず、\(n\)角形における角度の問題は、それがある基準を満たす(角度のわかる三角形を組み合わせて作図できる)ならば折れ線の問題に帰着できることを示しました。