数学徘徊記

自由な数学ブログ。

平方剰余の相互法則の証明(6)

これがラスト。

更新が遅れてしまったが、
平方剰余の相互法則を証明しよう。

\(p,q\)を互いに異なる奇素数とする。そのとき、
\[\left(\frac{p}{q}\right)\left(\frac{q}{p}\right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2}}\]が成り立つ。

これは格子を使った照明が一番簡明である。
koshi

上の図の正方格子において\(x\)軸上に\(OA=\frac{p+1}{2}\)を、\(y\)軸上に\(OB=\frac{q+1}{2}\)をとって長方形\(OACB\)の内部の格子点を考察する。いま、直線\(\frac{y}{x}=\frac{q}{p}\)を\(OL\)とする。横線\(OM=x\)に対応する\(OL\)上の点を\(P\)とすれば、\(MP=\frac{qx}{p}\)。
ゆえに\(x\)を\(1,2,\cdots,\frac{p-1}{2}\)とするとき、\(qx\)を\(p\)で割った剰余が\(\frac{p}{2}\)よりも大きいのは、\(\frac{qx}{p}\)の分数部分が\(\frac{1}{2}\)よりも大きいときで、すなわち\(P\)を通る縦線上で\(P\)から\(\frac{1}{2}\)の距離にある格子点が\(OL\)の上側にあるときに限る。ゆえに\(\left(\frac{q}{p}\right)=(-1)^n\)における\(n\)は\(OL\)とそれを\(y\)軸の向きに\(\frac{1}{2}\)だけ平行に移動した\(GG'\)とにはさまれる平行四辺形\(OGG'L\)の内部にある格子点の数である。
同様に\(\left(\frac{p}{q}\right)=(-1)^m\)における\(m\)は\(OL\)とそれを\(x\)軸の向きに\(\frac{1}{2}\)だけ平行に移動した\(HH'\)とにはさまれる平行四辺形\(OHH'L\)の内部にある格子点の数である。
すなわち\(\left(\frac{q}{p}\right)\left(\frac{p}{q}\right)=(-1)^{m+n}\)における\(m+n\)はこれら2つの平行四辺形の内部にある格子点の総数であるが、図に示すように格子点\(C\left(\frac{p+1}{2},\frac{q+1}{2}\right)\)を一頂点とする、一辺が\(\frac{1}{2}\)である小正方形{CG'LH'}を付け加えて六角{OGG'CH'H}を作れば、その内部にある格子点の数はやはり\(m+n\)である。
さて\(OC\)の中点\(\left(\frac{p+1}{4},\frac{q+1}{4}\right)\)はこの六角形の対称の中心で、格子点はこの点に関して2つずつ互いに対称であることは作図によって明白である。ゆえに\(m+n\)が奇数であるか、偶数であるかは、中心\(\left(\frac{p+1}{4},\frac{q+1}{4}\right)\)それ自身が格子点であるか、または格子点でないかによって決定される。
ゆえに\(\frac{p+1}{4},\frac{q+1}{4}\)がともに整数、すなわち\(p,q\)がともに\(4t-1\)の形の素数であるときに限って、\(m+n\)が奇数、したがって
\[\left(\frac{q}{p}\right)\left(\frac{p}{q}\right)=-1\]
である。すなわち平方剰余の相互法則が証明された。
あるいはまた三角形\(GG'B,HH'A\)は同数の格子点を含むから、それを\(k\)とすれば、長方形\(OACB\)の内部の格子点の総数は\(m+n+2k\)である。しかるに長方形の内部には明らかに
\[\frac{p+1}{2}\cdot\frac{q+1}{2}\]
の格子点があるから
\[\left(\frac{q}{p}\right)\left(\frac{p}{q}\right)=(-1)^{m+n}=(-1)^{m+n+2k}=(-1)^{\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2}}\]

(参考:初等整数論講義)

広中杯2016ファイナル3問目

この問題、本番では全然解けず、
しかし家でやってみたら解けてしまったという
悔しい問題。
問題
へこみのない四角形ABCDの対角線ACとBDは点Eにおいて垂直に交わっていて、
∠EBC=12°, ∠EAB=∠CDE=33°, BE+EC=1
となっている。
このとき、△ABEの面積と△CDEの面積の差を求めよ。
b1

この問題は、BE+EC=1という条件をどのように使うかが難しい。
とある有名問題に結び付けられるか。
(この解き方はほんの一例。)


解答
b2

辺BDを軸として点Cに対称な点をPとする。
そして、辺AB上に∠BPQ=90°となる点Qをとる。

このとき、簡単な計算で∠PBQ=45°がわかるので、
△BPQは直角二等辺三角形である。よってBP=PQ。
また、BC=BPより、BC=PQである。

そして、簡単な計算で∠APQ=∠DBC=12°、
∠AQP=∠DCB=135°がなので、
BC=PQとあわせると、△AQP≡△DCBということがわかる。

ここで、△ABEの面積と△CDEの面積の差は
△ABCの面積と△DBCの面積の差に等しく、
それは四角形QBCPの面積に等しい。(△AQP≡△DCBより)

では次に、四角形QBCPの面積を求めるのだが、
これは有名問題の変化形である。

その有名問題というのが、
b3

略解はこれ。こたえは1/4である。
b4

もうわかっただろう。四角形QBCPの面積は、1/2である。
有名問題の図形を2倍にしたものであることがわかるだろう。
というわけで、こたえは1/2である。



平方剰余の相互法則の証明(5)

今回は平方剰余の相互法則を証明する前に、補充法則を証明する。

第1補充法則
\[\left(\frac{-1}{p}\right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}}\]
第2補充法則
\[\left(\frac{2}{p}\right)=(-1)^{\frac{p^2-1}{8}}\]
また、これは名前がついているかわからないのだが、重要な定理。
(一応、ここでは「平方剰余の積の法則」とでも呼んでおこう。)
\[\left(\frac{ab}{p}\right)=\left(\frac{a}{p}\right)\left(\frac{b}{p}\right)\]


それぞれの証明を見ていこう。

第1補充法則


補題2(オイラーの基準)より明らか。(\(n=-1\)を代入すれば直ちに得られる。)

第2補充法則


\(2,4,6,\cdots ,p-5,p-3,p-1\)のうち\(\frac{p}{2}\)より大きいものの個数を\(n\)とすると、
\(n\)は\(1,3,5,\cdots\)の中で\(\frac{p}{2}\)より小さいものの個数にもなる。
補題3(ガウスの予備定理)より、(\(a=2\)を代入)
\(n\)の奇遇が判定できれば、\(\left(\frac{2}{p}\right)\)が求められる。
\(1,3,5,\cdots\)はすべて奇数なので、
\(1+3+5+\cdots +\frac{p-1}{2}\)が偶数ならば、\(n\)は偶数となり、
\(1+3+5+\cdots +\frac{p-1}{2}\)が奇数ならば、\(n\)は奇数となる。
\(1+3+5+\cdots +\frac{p-1}{2}=\frac{1}{2} \frac{p-1}{2} \left(\frac{p-1}{2}+1\right)=\frac{p^2-1}{8}\)
より、\(\frac{p^2-1}{8}\)と\(n\)の奇遇は一致する。
よって
\[\left(\frac{2}{p}\right)=(-1)^n=(-1)^{\frac{p^2-1}{8}}\]

平方剰余の積の法則


これも 補題2(オイラーの基準)より明らかである。
\[\left(\frac{ab}{p}\right)\equiv (ab)^\frac{p-1}{2} =a^\frac{p-1}{2} b^\frac{p-1}{2}\equiv \left(\frac{a}{p}\right)\left(\frac{b}{p}\right)\]また一番左の辺と一番右の辺は両方\(\pm 1\)だから、
\[\left(\frac{ab}{p}\right)=\left(\frac{a}{p}\right)\left(\frac{b}{p}\right)\]

平方剰余の相互法則の証明(4)

補題3(ガウスの予備定理)
\(p\)を奇素数、\((a,p)=1\)とする。このとき
\[1\cdot a,2\cdot a,\cdots ,\frac{p-1}{2}\cdot a\]
のうち、\(p\)で割った余りが\(\frac{p}{2}\)より大きいものの個数を\(n\)とするとき、
\[\left(\frac{a}{p}\right)=(-1)^n\]
が成立する。

証明
\(1\cdot a,2\cdot a,\cdots ,\frac{p-1}{2}\cdot a\)の各々を\(p\)で割った余りを\(r\)とすると、\(0\leq r<p\)である。そこで、\(\frac{p}{2}<r<p\)なら\(r-p=r'\),\(0\leq r \leq \frac{p}{2}\)なら\(r=r'\)とおけば、\(-\frac{p}{2}<r \leq \frac{p}{2}\)である。この\(r'\)を絶対値最小の余りという。したがって、\(n\)は\(r'\)が負であるようなものの個数と一致する。そこで、
\[A=\{a,2a,\cdots,\frac{p-1}{2}a\},\]
\[B=\{\pm 1,\pm 2,\cdots,\pm \frac{p-1}{2}\}\]
とおく。\(A,B\)はともに、\(p\)と互いに素で法\(p\)に関して互いに合同でない数からなっている。したがって、\(A\)の各元は\(B\)のただ1つの元と\(p\)を法として合同であり、\(A\)の元\(ka\)が\(B\)の元\(b\)と合同なら\(-b\)と合同な\(A\)の元は存在しない。実際、
\[ka\equiv b, la\equiv -b,\]
\[1\leq k,l \leq \frac{p-1}{2}\]
ならば、\((k+l)a\equiv 0\)で\((a,p)=1\)だから、\(k+l\equiv 0\)。これは、\(2\leq k+l\leq p-1\)に反する。よって、
\[a\cdot 2a\cdot \cdots \cdot \frac{p-1}{2}a\equiv (-1)^n 1\cdot 2\cdot \cdots \cdot \frac{p-1}{2}\]
つまり
\[\left(\frac{p-1}{2}\right)!a^{\frac{p-1}{2}}\equiv (-1)^n \left(\frac{p-1}{2}\right)\]
ここで、\(\left(\left(\frac{p-1}{2}\right)!,p\right)\)だから、
\[a^{\frac{p-1}{2}}\equiv (-1)^n\]
一方、補題2より、\(\left(\frac{a}{p}\right)\equiv a^{\frac{p-1}{2}}\)であったから、両者をあわせて
\[\left(\frac{a}{p}\right)\equiv (-1)^n\]
が成立し、\(p\)は奇素数だから結論を得る。
(参考:数学セミナー2016年2月号)


平方剰余の相互法則の証明(3)

つぎに、平方剰余に関する次の補題を証明する。これは「オイラーの基準」と呼ばれている。
補題2
\[\left(\cfrac{a}{p}\right)\equiv a^{\frac{p-1}{2}} \pmod p\]
これはかなりきれいな式といえるだろう。

証明
以下、合同式はすべて \(p\) を法としたものである。

\(A=\{1,2,\cdots ,p-1\}\) とおく。

補題1.1より、 \(r\in A\) に対し \(sr\equiv a\) となる \(A\) の元 \(s\) がただ1つある。

また、 \(r\cdot r^{-1}\equiv 1\) となる \(A\) の元 \(r^{-1}\) も存在するため、
\(A\) の元 \(k,l\) が \(kr\equiv lr\) を満たすとき、
\(krr^{-1}\equiv lrr^{-1}\) より \(k\equiv l\) である。

よって、対応 \(r\mapsto s\) は単射である。この \(s\) と \(r\) を互いの同伴数と呼ぶ。

(1)
\(\left(\frac{a}{p}\right)=1\) のとき、 \(x^2\equiv a\) は解 \(x=r\) をもつ。
このことは、 \(r\) が \(r\) 自身と同伴であることを示す。
\((p-r)^2\equiv a\) だから、 \(p-r\) も自分自身と同伴である。
\(r\) と \(p-r\) は \(p\) を法として合同でないから、
補題1より、2次合同方程式 \(x^2\equiv a\) の解は \(r\) と \(p-r\) の2個のみである。
したがって、 \(A\) の元の残り \(p-3\) 個は互いに同伴なものの組に分かれる。ゆえに
\begin{eqnarray}
1\cdot2\cdot\cdots\cdot(p-1)=(p-1)!&\equiv& r(p-r)a^{\frac{p-3}{2}}
&\equiv&-a^{\frac{p-1}{2}}
\end{eqnarray}
となる。よって
\((p-1)!\equiv -a^{\frac{p-1}{2}}\)

(2)
\(\left(\frac{a}{p}\right)=-1\) のとき、 \(x^2\equiv a\) は解をもたないから、(1)と同様にして
\((p-1)!\equiv a^{\frac{p-1}{2}}\)

ここで、 \(\left(\frac{1}{p}\right)=1\) だから(1)より \((p-1)!\equiv -1\)
よって、 \(\left(\frac{a}{p}\right)=1\) なら \(a^{\frac{p-1}{2}}\equiv 1\) 、 \(\left(\frac{a}{p}\right)=-1\) なら \(a^{\frac{p-1}{2}}\equiv -1\) となり結論を得る。
(参考:数学セミナー2016年2月号)

平方剰余の相互法則の証明(2)

まずこの補題を証明する。この補題は、平方剰余の相互法則だけではなく、いろいろな定理の補題としてよく使われる定理である。

補題1:\(p\)を素数とする。そのとき、\(n\)次合同方程式
\[f(x)\equiv 0 \pmod p \hspace{1cm}\cdots (1) \]は解をもってもその個数は\(n\)個以下である。

この証明に次の補題を使う。(補題補題ってなんなんだ…。)

補題1.1:\(a\)と\(m\)が互いに素なとき、1次合同方程式
\[ax \equiv b \pmod m\]はただ1つの解を持つ。

証明:\(a\)と\(m\)が互いに素だから\(ax_{0}+my_{0}=1\)となる\(x_{0},y_{0} \in \mathbb{Z}\)がある。(この記事参照。)よって、
\[a\cdot bx_{0}-b=m\cdot (-by_{0})\]
したがって、\(x=bx_{0}\)は\(ax \equiv b \pmod m\)の解である。
\(x_{1},x_{2}\)を\(ax \equiv b \pmod m\)の2つの解とすると、\(ax_{1} \equiv ax_{2} \pmod m\)。
ここで、\(a\)と\(m\)が互いに素だから\(x_{1} \equiv x_{2} \pmod m\)となる。

補題1の証明

\(n\)に関する帰納法で示す。まず、
\[f(x)=a_{n}x^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_{0}\]とすれば、\(p\)は\(a_{n}\)で割り切れないから{(p,a_{n})=1}である。\(n=1\)のときは、補題1.1より正しい。つぎに(1)が解\(x_{0}\)を持ったとする。このとき、
\[f(x)=(x-x_{0})g(x)+f(x_{0})\]ここで、\(g(x)\)は\(a_{n}x^{n-1}\)を最高次の項とする\(n-1\)次の整数係数の多項式を表す。したがって、(1)は次の合同方程式
\[(x-x_{0})g(x)\equiv 0 \pmod p\]と同一の解をもつ。そこで、(1)に\(x_{0}\)と異なる解がなければそれで補題は成立するので、\(x_{0}\)と異なる解\(x_{1}\)があったとする。そのとき、
\[(x-x_{0})g(x_{1})\equiv 0 \pmod p\]\(p \mid \hspace{-.67em}/ (x_{1}-x_{0})\)だから、{(p,(x_{1}-x_{0}))=1}。よって、\(g(x_{1})\equiv 0 \pmod p\)。つまり、\(x_{0}\)と異なる(1)の解は\(n-1\)次の合同方程式\(g(x)\equiv 0 \pmod p\)の解となる。ここで、帰納法の仮定を用い、(1)に高々\(n\)個の解しかないことがわかる。



(参考:数学セミナー2016年2月号)

平方剰余の相互法則の証明(1)

あ、最近整数論やってない…。
というわけで整数論の記事を書く。

今回はシリーズものにする。題して「平方剰余の相互法則シリーズ」である。


まず、平方剰余の相互法則を語るうえで必要な記号について説明する。

\(p\)を奇素数、\(a\)を\(p\)と互いに素な整数とする。2次の合同方程式
\[x^2\equiv a \pmod p\]が解を持つとき、\(a\)は\(p\)を法として平方剰余であるといい、
\(\left(\frac{a}{p}\right)=1\)と書く。
そうでないときは、\(a\)は\(p\)を法として平方非剰余であるといい、
\(\left(\frac{a}{p}\right)=-1\)と書く。
この記号\(\left(\frac{a}{p}\right)\)をルジャンドルの平方剰余記号という。


たとえば、2次合同方程式\(x^2\equiv 4 \pmod 5\)は、
\(x\equiv 2,4\)という解があるため、\(\left(\frac{4}{5}\right)=1\)である。
2次合同方程式\(x^2\equiv 3 \pmod 5\)は解をもたないため、
\(\left(\frac{3}{5}\right)=-1\)である。

そして、平方剰余の相互法則がこちら。
\(p,q\)を互いに異なる奇素数とする。そのとき、
\[\left(\frac{p}{q}\right)\left(\frac{q}{p}\right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2}}\]が成り立つ。

この定理の完全な証明はガウスが与えた。

このシリーズでは、この定理の証明について解説する。

(参考:数学セミナー2016年2月号)