数学徘徊記

自由な数学ブログ。

LTEの補題

2019.06.25 追記:LTE補題について新しい記事を書きました。

こちらもぜひ読んでください。 

dama-solved.hatenablog.com

 
更新が遅れました。
学園祭、定期試験などあり、少し忙しかったので。。。すいません。

LTEといっても、Long Term Evolution(携帯電話の通信規格)ではありません。 

Lifting The Exponent Lemmaです。

これは整数論の定理で、痒いところに手が届くような便利な定理です。僕は結構気に入ってます。

整数論はmodulo演算が基本ですが、それだけではやややりにくいことをこの定理はやってくれるので、
知ってると絶対プラスになると思います。(特に数オリ)

1:オーダーについて 

1.1 オーダーの定義

オーダーとは、簡単に言えば「何回割れるか」。しっかり定義を書くと、

0でない整数\(n\)と素数\(p\)に対して、次を見たす非負整数\(d\)が存在する。
\(n\)は\(p^d\)では割り切れるが、\(p^{d+1}\)では割り切れない。
この\(d\)のことを素数\(p\)に関する\(n\)のオーダーといい、\({\rm ord}_p n\)と書く。

というものです。

1.2 オーダーのちょっとした性質

\({\rm ord}_p (mn)={\rm ord}_p m + {\rm ord}_p n\)
\({\rm ord}_p (m+n) \geq \min \{ {\rm ord}_p m, {\rm ord}_p n \}\) 

これが関係してくる問題の場合、普通にmodulo演算で\(\bmod p\)で考えると0になって、何回割れるかわからない…ということが多々あります。

そんなときにLTE補題が使えるかもしれません。

2:LTE補題

定理:
\(p\)を奇素数とする。\(x,y\)を、\(x \equiv y \pmod p\)であるが両方とも\(p\)の倍数ではない整数とする。このとき、正の整数\(n\) に対して、
\({\rm ord}_p (x^n-y^n) = {\rm ord}_p (x-y)+{\rm ord}_p n\)

パッと見では、うーん、というか、だから何?、という感じだと思います。
まあ、今回は紹介だけして、次の記事でバーンと使います。楽しみにしていてください。

3:証明

おもに3ステップで証明します。

3.1 \(n\)が\(p\)で割り切れないとき

\(x^n-y^n=(x-y)(x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1})\)
因数分解できます。

おっと、\((x-y)\)が出ましたね。LTE補題にするために、その右側について考えます。

\(x \equiv y \pmod p\)なので、
\((x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}) \equiv ny^{n-1} \pmod p\)
そして、\(n\)も\(y\)も\(p\)で割り切れないので、
\({\rm ord}_p (x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1})=0\)
これで、右側のほうもわかりました。

よって、
\begin{eqnarray}
{\rm ord}_p (x^n-y^n) & = & {\rm ord}_p (x-y)(x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}) \\
& = & {\rm ord}_p (x-y) + {\rm ord}_p (x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}) \\
& = & {\rm ord}_p (x-y) + 0 \\
& = & {\rm ord}_p (x-y)+{\rm ord}_p n 
\end{eqnarray}
が成り立ちます。(最後に、\(n\)が\(p\)で割り切れないことを使いました) 

3.2 \(n=p\)のとき

ここが少し難しい。

3.1と同じようにして、
\(x^n-y^n=(x-y)(x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1})\) 
因数分解し、\(x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}\)について考えます。

で、ここから大変なんですけど、
\(x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}\)をむりやり\(x-y\)で割ります。

そうすると
\(x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}=(x-y)(x^{p-2}+2x^{p-3}y+\cdots+(p-2)xy^{p-3}+(p-1)y^{p-2})+py^{p-1}\)
となります。 
なぜこうなるのか?これは、自分で展開してみるのが一番早いと思いますが、「右側が1ずつ大きくなっているが、うまく引かれて結局1が残る」という感じです。

\(x \equiv y \pmod p\)より、
\begin{eqnarray}
&& x^{p-2}+2x^{p-3}y+\cdots+(p-2)xy^{p-3}+(p-1)y^{p-2} \\
& \equiv & \{1+2+\cdots +(p-1)\}y^{p-2} \pmod p\\
& = & \frac{p(p-1)}{2}y^{p-2}
\end{eqnarray} 

\(p\)は奇素数なので、\(\cfrac{p-1}{2}\)は整数となり、 \(\cfrac{p(p-1)}{2}y^{p-2}\)は\(p\)の倍数です。

つまり、\(x^{p-2}+2x^{p-3}y+\cdots+(p-2)xy^{p-3}+(p-1)y^{p-2}\)は\(p\)の倍数です。

では、 
\(x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}=(x-y)(x^{p-2}+2x^{p-3}y+\cdots+(p-2)xy^{p-3}+(p-1)y^{p-2})+py^{p-1}\)
の式に戻りましょう。

\(x \equiv y \pmod p\)より、\(x-y\)は\(p\)の倍数。
また\(x^{p-2}+2x^{p-3}y+\cdots+(p-2)xy^{p-3}+(p-1)y^{p-2}\)も\(p\)の倍数なので、
\((x-y)(x^{p-2}+2x^{p-3}y+\cdots+(p-2)xy^{p-3}+(p-1)y^{p-2})\)は\(p^2\)の倍数です。

よって
\begin{eqnarray}
x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}&=&(x-y)(x^{p-2}+2x^{p-3}y+\cdots+(p-2)xy^{p-3}+(p-1)y^{p-2})+py^{p-1} \\
& \equiv & py^{p-1} \pmod{p^2}
\end{eqnarray}
となり、\(y^{p-1}\)は\(p\)の倍数ではないので、
\({\rm ord}_p (x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}) = 1\)です。

よって
\begin{eqnarray}
{\rm ord}_p (x^n-y^n) & = & {\rm ord}_p (x^p-y^p) \\
& = & {\rm ord}_p (x-y)(x^{p-1}+x^{p-2}y+\cdots+y^{p-1}) \\
& = & {\rm ord}_p (x-y) + {\rm ord}_p (x^{n-1}+x^{n-2}y+\cdots+y^{n-1}) \\
& = & {\rm ord}_p (x-y) + 1 \\
& = & {\rm ord}_p (x-y)+{\rm ord}_p p \\
& = & {\rm ord}_p (x-y)+{\rm ord}_p n
\end{eqnarray}

3.3 \(n\)が一般のとき

\({\rm ord}_p n\)で数学的帰納法を使います。

\(n=ap^m\)(ただし、\(a\)は\(p\)で割り切れない整数)とおき、

\({\rm ord}_p (x^n-y^n) = {\rm ord}_p (x-y)+m\)    …①

となることを証明します。(\({\rm ord}_p n=m\)より)

\(n\)が\(p\)で割り切れない場合は3.1で証明したので、
\(m=0\)のとき、①は成り立ちます。

そして、\(m=k\)のとき①が成り立ったら
\(m=k+1\)のときも①が成り立つことを証明します。

\(n=ap^{k+1}\)とおきます。
このとき、
\(x^n-y^n=x^{ap^{k+1}}-y^{ap^{k+1}}=(x^{ap^k})^p-(y^{ap^k})^p\)
です。なんか3.2が使えそうな感じがします。

実際、\(x^k-y^k\)は\(x-y\)で割り切れ、しかも\(x-y\)は\(p\)で割り切れるので、
\(x^k-y^k\)は\(p\)で割り切れます。
これは、3.2が使えることを意味します。

よって、
\begin{eqnarray}
{\rm ord}_p (x^n-y^n) & = & {\rm ord}_p ((x^{ap^k})^p-(y^{ap^k})^p) \\
& = & {\rm ord}_p  (x^{ap^k}-y^{ap^k}) +1\\
& = & {\rm ord}_p (x-y) + {\rm ord}_p k +1\\
& = & {\rm ord}_p (x-y) +k+1 \\
& = & {\rm ord}_p (x-y)+{\rm ord}_p ap^{k+1}\\
& = & {\rm ord}_p (x-y)+{\rm ord}_p n
\end{eqnarray}

となり、(m=k\)のとき①が成り立ったら\(m=k+1\)のときも①が成り立つので
証明が完了しました。 

4 まとめ

けっこう大変だったと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
使用例は次の記事で紹介しようと思っているので楽しみにしてください。 

問題コーナー

ほんっと久しぶり。前は12月だったかな。

なんとなく三角形や円を描いていたらできた問題。
僕の解き方だとまだ回りくどいと思うので、
エレガントな解答をお願いします。

簡単だったらごめんなさいm(_ _)m

というわけで、早速問題。
三角形\(ABC\)の外心を\(O\)とし、辺\(BC,CA,AB\)の中点をそれぞれ\(M_A,M_B,M_C\)とする。
このとき三角形\(AOM_A,BOM_B,COM_C\)の外接円は点\(O\)以外の1点で交わることを示せ。
解答はコメント欄にてお願いします。

(追記)
三角形\(ABC\)は二等辺三角形でないという条件を付けてください。
つけ忘れていました。すいません。

また、期限は10月31日までとします。

平方剰余の相互法則の証明(6)

これがラスト。

更新が遅れてしまったが、
平方剰余の相互法則を証明しよう。

\(p,q\)を互いに異なる奇素数とする。そのとき、
\[\left(\frac{p}{q}\right)\left(\frac{q}{p}\right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2}}\]が成り立つ。

これは格子を使った照明が一番簡明である。
koshi

上の図の正方格子において\(x\)軸上に\(OA=\frac{p+1}{2}\)を、\(y\)軸上に\(OB=\frac{q+1}{2}\)をとって長方形\(OACB\)の内部の格子点を考察する。いま、直線\(\frac{y}{x}=\frac{q}{p}\)を\(OL\)とする。横線\(OM=x\)に対応する\(OL\)上の点を\(P\)とすれば、\(MP=\frac{qx}{p}\)。
ゆえに\(x\)を\(1,2,\cdots,\frac{p-1}{2}\)とするとき、\(qx\)を\(p\)で割った剰余が\(\frac{p}{2}\)よりも大きいのは、\(\frac{qx}{p}\)の分数部分が\(\frac{1}{2}\)よりも大きいときで、すなわち\(P\)を通る縦線上で\(P\)から\(\frac{1}{2}\)の距離にある格子点が\(OL\)の上側にあるときに限る。ゆえに\(\left(\frac{q}{p}\right)=(-1)^n\)における\(n\)は\(OL\)とそれを\(y\)軸の向きに\(\frac{1}{2}\)だけ平行に移動した\(GG'\)とにはさまれる平行四辺形\(OGG'L\)の内部にある格子点の数である。
同様に\(\left(\frac{p}{q}\right)=(-1)^m\)における\(m\)は\(OL\)とそれを\(x\)軸の向きに\(\frac{1}{2}\)だけ平行に移動した\(HH'\)とにはさまれる平行四辺形\(OHH'L\)の内部にある格子点の数である。
すなわち\(\left(\frac{q}{p}\right)\left(\frac{p}{q}\right)=(-1)^{m+n}\)における\(m+n\)はこれら2つの平行四辺形の内部にある格子点の総数であるが、図に示すように格子点\(C\left(\frac{p+1}{2},\frac{q+1}{2}\right)\)を一頂点とする、一辺が\(\frac{1}{2}\)である小正方形{CG'LH'}を付け加えて六角{OGG'CH'H}を作れば、その内部にある格子点の数はやはり\(m+n\)である。
さて\(OC\)の中点\(\left(\frac{p+1}{4},\frac{q+1}{4}\right)\)はこの六角形の対称の中心で、格子点はこの点に関して2つずつ互いに対称であることは作図によって明白である。ゆえに\(m+n\)が奇数であるか、偶数であるかは、中心\(\left(\frac{p+1}{4},\frac{q+1}{4}\right)\)それ自身が格子点であるか、または格子点でないかによって決定される。
ゆえに\(\frac{p+1}{4},\frac{q+1}{4}\)がともに整数、すなわち\(p,q\)がともに\(4t-1\)の形の素数であるときに限って、\(m+n\)が奇数、したがって
\[\left(\frac{q}{p}\right)\left(\frac{p}{q}\right)=-1\]
である。すなわち平方剰余の相互法則が証明された。
あるいはまた三角形\(GG'B,HH'A\)は同数の格子点を含むから、それを\(k\)とすれば、長方形\(OACB\)の内部の格子点の総数は\(m+n+2k\)である。しかるに長方形の内部には明らかに
\[\frac{p+1}{2}\cdot\frac{q+1}{2}\]
の格子点があるから
\[\left(\frac{q}{p}\right)\left(\frac{p}{q}\right)=(-1)^{m+n}=(-1)^{m+n+2k}=(-1)^{\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2}}\]

(参考:初等整数論講義)

広中杯2016ファイナル3問目

この問題、本番では全然解けず、
しかし家でやってみたら解けてしまったという
悔しい問題。
問題
へこみのない四角形ABCDの対角線ACとBDは点Eにおいて垂直に交わっていて、
∠EBC=12°, ∠EAB=∠CDE=33°, BE+EC=1
となっている。
このとき、△ABEの面積と△CDEの面積の差を求めよ。
b1

この問題は、BE+EC=1という条件をどのように使うかが難しい。
とある有名問題に結び付けられるか。
(この解き方はほんの一例。)


解答
b2

辺BDを軸として点Cに対称な点をPとする。
そして、辺AB上に∠BPQ=90°となる点Qをとる。

このとき、簡単な計算で∠PBQ=45°がわかるので、
△BPQは直角二等辺三角形である。よってBP=PQ。
また、BC=BPより、BC=PQである。

そして、簡単な計算で∠APQ=∠DBC=12°、
∠AQP=∠DCB=135°がなので、
BC=PQとあわせると、△AQP≡△DCBということがわかる。

ここで、△ABEの面積と△CDEの面積の差は
△ABCの面積と△DBCの面積の差に等しく、
それは四角形QBCPの面積に等しい。(△AQP≡△DCBより)

では次に、四角形QBCPの面積を求めるのだが、
これは有名問題の変化形である。

その有名問題というのが、
b3

略解はこれ。こたえは1/4である。
b4

もうわかっただろう。四角形QBCPの面積は、1/2である。
有名問題の図形を2倍にしたものであることがわかるだろう。
というわけで、こたえは1/2である。



平方剰余の相互法則の証明(5)

今回は平方剰余の相互法則を証明する前に、補充法則を証明する。

第1補充法則
\[\left(\frac{-1}{p}\right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}}\]
第2補充法則
\[\left(\frac{2}{p}\right)=(-1)^{\frac{p^2-1}{8}}\]
また、これは名前がついているかわからないのだが、重要な定理。
(一応、ここでは「平方剰余の積の法則」とでも呼んでおこう。)
\[\left(\frac{ab}{p}\right)=\left(\frac{a}{p}\right)\left(\frac{b}{p}\right)\]


それぞれの証明を見ていこう。

第1補充法則


補題2(オイラーの基準)より明らか。(\(n=-1\)を代入すれば直ちに得られる。)

第2補充法則


\(2,4,6,\cdots ,p-5,p-3,p-1\)のうち\(\frac{p}{2}\)より大きいものの個数を\(n\)とすると、
\(n\)は\(1,3,5,\cdots\)の中で\(\frac{p}{2}\)より小さいものの個数にもなる。
補題3(ガウスの予備定理)より、(\(a=2\)を代入)
\(n\)の奇遇が判定できれば、\(\left(\frac{2}{p}\right)\)が求められる。
\(1,3,5,\cdots\)はすべて奇数なので、
\(1+3+5+\cdots +\frac{p-1}{2}\)が偶数ならば、\(n\)は偶数となり、
\(1+3+5+\cdots +\frac{p-1}{2}\)が奇数ならば、\(n\)は奇数となる。
\(1+3+5+\cdots +\frac{p-1}{2}=\frac{1}{2} \frac{p-1}{2} \left(\frac{p-1}{2}+1\right)=\frac{p^2-1}{8}\)
より、\(\frac{p^2-1}{8}\)と\(n\)の奇遇は一致する。
よって
\[\left(\frac{2}{p}\right)=(-1)^n=(-1)^{\frac{p^2-1}{8}}\]

平方剰余の積の法則


これも 補題2(オイラーの基準)より明らかである。
\[\left(\frac{ab}{p}\right)\equiv (ab)^\frac{p-1}{2} =a^\frac{p-1}{2} b^\frac{p-1}{2}\equiv \left(\frac{a}{p}\right)\left(\frac{b}{p}\right)\]また一番左の辺と一番右の辺は両方\(\pm 1\)だから、
\[\left(\frac{ab}{p}\right)=\left(\frac{a}{p}\right)\left(\frac{b}{p}\right)\]

平方剰余の相互法則の証明(4)

補題3(ガウスの予備定理)
\(p\)を奇素数、\((a,p)=1\)とする。このとき
\[1\cdot a,2\cdot a,\cdots ,\frac{p-1}{2}\cdot a\]
のうち、\(p\)で割った余りが\(\frac{p}{2}\)より大きいものの個数を\(n\)とするとき、
\[\left(\frac{a}{p}\right)=(-1)^n\]
が成立する。

証明
\(1\cdot a,2\cdot a,\cdots ,\frac{p-1}{2}\cdot a\)の各々を\(p\)で割った余りを\(r\)とすると、\(0\leq r<p\)である。そこで、\(\frac{p}{2}<r<p\)なら\(r-p=r'\),\(0\leq r \leq \frac{p}{2}\)なら\(r=r'\)とおけば、\(-\frac{p}{2}<r \leq \frac{p}{2}\)である。この\(r'\)を絶対値最小の余りという。したがって、\(n\)は\(r'\)が負であるようなものの個数と一致する。そこで、
\[A=\{a,2a,\cdots,\frac{p-1}{2}a\},\]
\[B=\{\pm 1,\pm 2,\cdots,\pm \frac{p-1}{2}\}\]
とおく。\(A,B\)はともに、\(p\)と互いに素で法\(p\)に関して互いに合同でない数からなっている。したがって、\(A\)の各元は\(B\)のただ1つの元と\(p\)を法として合同であり、\(A\)の元\(ka\)が\(B\)の元\(b\)と合同なら\(-b\)と合同な\(A\)の元は存在しない。実際、
\[ka\equiv b, la\equiv -b,\]
\[1\leq k,l \leq \frac{p-1}{2}\]
ならば、\((k+l)a\equiv 0\)で\((a,p)=1\)だから、\(k+l\equiv 0\)。これは、\(2\leq k+l\leq p-1\)に反する。よって、
\[a\cdot 2a\cdot \cdots \cdot \frac{p-1}{2}a\equiv (-1)^n 1\cdot 2\cdot \cdots \cdot \frac{p-1}{2}\]
つまり
\[\left(\frac{p-1}{2}\right)!a^{\frac{p-1}{2}}\equiv (-1)^n \left(\frac{p-1}{2}\right)\]
ここで、\(\left(\left(\frac{p-1}{2}\right)!,p\right)\)だから、
\[a^{\frac{p-1}{2}}\equiv (-1)^n\]
一方、補題2より、\(\left(\frac{a}{p}\right)\equiv a^{\frac{p-1}{2}}\)であったから、両者をあわせて
\[\left(\frac{a}{p}\right)\equiv (-1)^n\]
が成立し、\(p\)は奇素数だから結論を得る。
(参考:数学セミナー2016年2月号)